現在は日本には多くのパイプオルガンが設置されていますが、戦前は希少価値的存在でした。従って私の世代では耳に出来たのはレコードからでした。レコードは御存じの通り細い溝に音の波形を刻みますので大きな振幅を必要とする低音はかなりの制限を受けます。現在はCDに録音され実音に近い音で聴くことが出来ます。従って大教会に行かなくてもパイプオルガンの音色を十分再生出来ます。しかし大聖堂に反響するパイプオルガンの音色は耳だけでなく体で感じる低音の響きには敵いません。
さてパイプオルガンは名前の通り金属製や木製のパイプを音源としそのサイズは大小さまざまや形のものがあります。初期は教会の合唱音楽の補助として伴奏・間奏・前奏・後奏をつとめ、後の時代の大型楽器が合唱の代奏の役をつとめ始めました。ルネッサンス時代の改革教会の出現により、会衆が歌う詩篇歌をリードする役目を与えられ、礼拝堂の後部または側面に大型のパイプオルガンが設置されることになりました。北欧の大聖堂には必ず大型のパイプオルガンが設置され、その音色は会堂に反響して荘厳な音色には心がしびれます。
パイプは金属製の金管や木管からなり大は長さ64フィート、小は数インチと様々です。大型の送風機によって歌口に空気を吹き付けて音を出します。ピアノと違って音の強弱は出来ません(オルガンによっては前面にシャッターを付けているのもあります)。鍵盤は2段以上で6段くらいまでとペダル(足で演奏する)があり、各鍵盤には付属するストップ(音色と音高を定めたパイプ列を作動させる装置)の群れを備えています。17世紀から18世紀前半にかけてのバロック期に多くのオルガン製作者が輩出し北ドイツではアルプ・シュニットガーを始めジルバーマンなどが有名です。残念ながら世界大戦によって多くが失われましたが、運よく残って多くのCDが発売されています。
一口にパイプオルガンと言っても建物即ち会堂と一体のものでその会堂に特有の音色があり、場所を変えて聴き比べる事は出来ません。近代になって電子工学が発達し、音源は発信器と増幅器それにスピーカーを組み合わせてパイプオルガンの音色に近づけられるようになりましたし、これにより音の強弱が簡単に出来る様になりました。
各地で有料無料のコンサートは「オルガンコンサートガイド」で調べられますので参考にして下さい。シドニー滞在中は市の中心に在る聖公会(St.Andrews大聖堂)では毎週金曜日午後1時から1ドルコンサートが開かれ各地からのオルガニストが交代で演奏してくれました。また市の公会堂には世界有数の大オルガンが年数回無料演奏会を開催していました。オルガン曲と言えばバッハが先ず思い浮かびます。その作曲した曲の整理のためBWV番号が付与されていて最も有名な曲はBWV565 Toccata & Fugue in D minor(トッカータとフーガ ニ短調)ではないでしょうか!
戸山教会員