「心の眼で見た言葉」 5からの続き

 テレビや雑誌などでもよく紹介された方ですから皆さんもご存知かと思いますが、星野富弘さんという方がおられます。星野さんはある事故で、首から下がまったく不自由な体となってしまわれました。中学へ体育の教師として赴任してまもなく、生徒の前で鉄棒の模範演技をしようとして失敗し、首の骨を折って、それ以来寝たきりの身となられたのです。皆さん、自分でちょっとその状態を想像してみて下さい。どんなに苦しいことでしょう。どんなにか辛い思いが襲ってくることでしょう。首から下がまったく動かないのです。絶望でした。

 しかし、星野さんはお母様と奥様の助けによって立ち上がられました。足で立ち上がったわけではありません。わずかに動く首で絵を描き始められたのです。口に加えた筆に奥様から絵の具を付けてもらい、何時間もかけて絵と詩を書くようになられました。それがじつはとても素晴らしい、誰をも感動させずにはおかない絵と言葉です。星野さんが絶望から立ち直るきっかけは教会に通い、クリスチャンの奥様とそこで結婚されたことのようです。

 その絵と詩をすこしご紹介しましょう。「折れた菜の花」という絵と詩があります。

「私の首のように
茎が簡単におれてしまった
しかし菜の花はそこから芽を出し
花を咲かせた
私もこの花と
同じ水を飲んでいる
同じ光を受けている
強い茎になろう」

「心の眼で見た言葉」 7へ続く