西谷幸介牧師
「しじまの声を聞く ~ 礼拝とは何か」6からの続き

 最後に、あの「しじまの声」を聞いた預言者エリヤのことに触れたいと思います。エリヤは通常、カルメル山でバアルの神を信じる 450 人の預言者との戦いに勝利した聖書の神ヤハウェの預言者として有名です。エリヤの時代のイスラエルの王はアハブという王で、隣国サマリアをも支配し、多くの悪を行ないました。さらに隣国のシドンの王の娘イゼベルを妃とし、彼女たちが信じ拝んでいたバアルという農耕神に自ら進んで仕えるという、イスラエルの信仰からは逸脱した、偶像礼拝の罪に陥ったのでした。そこで、エリヤはアハブの罪を糾弾し、バアル神に仕える預言者たち 450 人と対決し、火の奇蹟によるヤハウェの助けを得て、彼らを打ち倒し、勝利したのでした。

 しかし、それでもアハブは悔い改めず、その妃イゼベルはエリヤの命を家来たちに付け狙わせます。命を奪われることを「恐れ、逃げた」< 列上 19:3> エリヤは、ヤハウェに対して「主よ、もう十分です。私の命を取って下さい」<19:4> と、半ば居直ります。「私は…主に情熱を傾けて仕えてきました。ところが、イスラエルの人々はあなたとの契約を捨て…預言者たちを…殺し…私一人だけが残り…私の命をも奪おうと狙っています」<19:10>。エリヤはヤハウェの命令に従い、文字どおり命を賭けてバアルの預言者たちと対決し勝利したにも拘らず、ヤハウェからの労わりも平安も与えられず、敵からなお自分の命を脅かされていることに、非常な不満を覚えたのでした。
続く